つまみ

balab通信

街の記号 その1:柴又

11年01月11日

昨年、「芸術と科学」の授業で、「君の好きな商店街に記号はあるのか?」という課題を出した。231名から提出されたレポートを見ると、多くのレポートにも登場する言葉が「温かさ」や「親しみ」であった。

数年ぶりに訪れた商店街のおばあちゃんが名前を覚えていてくれた。街にシャッターが増えないように、お店の人たちが頑張って活気が戻ってきた。路面電車の音や焼き鳥屋の匂いで、小さかったころの思い出がよみがえる・・・

今年、場ラボのコラムでは「街の記号」を1枚の写真で紹介しようと思う。

解説をあまりつけず、私が感じた記号を1枚の写真で表現できるのか。もし、その街に君が行きたくなれば、私の感じた記号がほんの一部でも君に伝わったのかもしれない。そんな思いをこめて、このシリーズを続けていきたい。

最初は柴又だ。

寅さん映画「男はつらいよ」は子供のころから観ている。でも、柴又に行ったのはつい先週のことだ。行かなければよかったと、少々後悔している。あまりにも実物の商店街がでしゃばりすぎて、寅さんいる帝釈天の参道の「温かさ」や「親しみ」が嘘らしくみえるのだ。だから、この街の記号は柴又駅前の寅さんの像にしておこうと思う。

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寅さん像の右上に小さく光っているのは、ゴミではなくて細い細い三日月だ。冷たい三日月を見ながら、寅さんは京成電車に乗って旅に出る。風の向くまま気の向くまま。誰でも一度はこんな旅をしたくなるのではないだろうか。

ちなみに、この写真はHDR(ハイダイナミックレンジ)合成だ。

小川克彦