11年01月16日
池波正太郎の小説「鬼平犯科帳」の主役である長谷川平蔵の実家は巣鴨にある。平蔵の実の母親が住んでいた家だ。当代の家主は平蔵の従兄にあたる三沢仙衛門である。巣鴨地蔵通りをぬけた都電荒川線の庚申塚駅近くに仙衛門宅があったという。火付盗賊改方長官である平蔵の役宅は、今の九段下の清水門外にあった。平蔵は今の白山通りを通って仙衛門宅に行ったのだろうか。
巣鴨駅からその白山通りを渡ってすぐに巣鴨地蔵通りの入口がある。おばあちゃんの原宿と呼ばれるそうだが、ミセスのおしゃれファッションの店が並んでいる。メリヤスや5本指靴下、日本一の赤パンツと元祖赤パンツ。懐かしく感じる言葉の看板が目につく。
そんな看板に誘われたのか、たくさんの女性が巣鴨のファッション店に立ち寄り、店員たちと楽しそうにおしゃべりしている。とげぬき地蔵はすぐそこなのに、きっと1時間はかかるのではないか。スローな歩みが街の記号だ。
それを表現する1枚の写真と言えば、この真っ赤なパンツのお店になる。
鬼平の物語はテンポよく話が進む。だから、たまに平蔵は巣鴨の仙衛門宅に泊まって、スローな時を過ごす。もし、平蔵が平成の巣鴨をみても、現代の巣鴨はこんなに歪んで見えないと思うが・・・
小川克彦