11年02月08日
慶應では、早慶戦のことを慶早戦と呼んでいる。昨年の慶早決勝戦では、7回まで斉藤祐紀投手にノーヒットノーランでおさえられていたが、8回に奥橋勇斗くん(小川研)が放ったヒットで1点を返した・・・という野球の話は別の機会にゆずり、まずは早稲田と慶應のキャンパスから話を始めよう。
早稲田といえば大隈重信の銅像がある早稲田キャンパスを思い出す。ただ、旧校舎の隣に新しい建物ができ、居心地はよくなったのかもしれないが、早稲田のイメージがだんだんと薄れて行く。これは慶應の三田キャンパスでも同じこと。旧図書館はそのままの風格ではあるが、ガラス張りの近代的な教室が増えてきた。早慶に比べると、東大本郷は広大な敷地だけに、少々近代的なビルができても、安田講堂や情報学環の威厳ある建物にはまだまだかなわない。
キャンパスの表面から大学を眺めると、その記号づくりに努力しているところとそうでないところがある。努力しないと、みな50年後はショッピングモールになって、教授たちが美しく売買される場所になるかもしれない。
さて、キャンパスのまわりにある商店街を比べてみよう。
道路沿いにたくさんの店舗が並んでいる早稲田は、これといった特徴がないのが特徴ではないか。夕方はあまり活気がない。学生たちは、松屋やてんやといったチェーン店で、もくもくと晩ご飯を食べているだけだ。しいてあげれば、この写真が記号になる。
このボリュームにこの値段。学生が好きそうだ。店の中には数人の学生グループがいた。彼らもまた言葉少なにビッグなステーキにかぶりついていた。
一方、三田の慶應商店街は飲み屋だらけだ。昭和レトロ風の落ち着いた店もあるにはあるが、大半の飲み屋は店先のメニューが顔になっている。ごちゃごちゃしているところは、早稲田と対照的だ。
近くにNEC本社があるためか、会社帰りのサラリーマンをいかに店に引き込むかがポイントだ。その勢いに、学生という記号が消えてしまった。
シンプルで静かな早稲田と、ごちゃごちゃして騒がしい慶應といったところか。大学のキャンパスも同じだが、大学街という記号がだんだんと消えて行く。村上春樹も村松友視もいない街は、うわべだけの薄っぺらい姿をさらしている。少なくとも大学はそうなりたくはない。もっとも、この記事も表面的になってしまったが、そこはご容赦である。
小川克彦