つまみ

balab通信

街の記号 その11:ハノイ・ケーブルと洗濯物編

11年06月04日

海外に行くとよく眺めるのが電柱と電線である。その昔、NTTに勤めていたときの習性だと思う。

日本の電柱には、電気、電話、インターネット、CATVのためのケーブルが敷設されている。電話やインターネットでは、一本の通信ケーブルの中に、数百本の銅線や光ファイバーが入っている。例えば、この写真は我が家に光が来たとき(FTTH:Fiber To The Home)の工事風景であるが、既設の光ファイバーケーブルの中から、一本の光ファイバーを選んで電柱から家の軒先に引っ張ってくる。この作業を楽にするよう、ケーブルの途中に配線ボックスがあり、どのファイバーをどのユーザ宅に使うかは設備システムで管理されている。

x1010089.jpg       写真:電柱の光ファイバーを家に引き込む(FTTH)工事

ところが、ハノイのケーブルは凄いことになっている。

電柱に配線ボックスはあるようだが、余分なケーブルがぐるぐる巻きになっていて、外に露出しているのだ。工事のやり方は日本と違うので、これが普通なのかもしれないが、それにしても大胆なケーブル工事だ。ただ、ケーブルがたくさん敷設されていくのは、文明の進歩を象徴しているようにもみえる。さらに、慣れてしまえば、たくさんのケーブルが街に張り巡らされている醜い姿が見えなくなるのも不思議だ。

最近は空中を走る街のケーブルを地下に埋める工事、いわゆる地下埋が行われている。商店街でも、街並みの見栄えをよくするため、地下埋によって電柱やケーブルを隠す。確かにケーブルのない横浜元町の街並みは美しい(元町の裏通りはケーブルだらけだが)。空がよく見えるようになる。

ハノイで狭い路地に入ると、空が見えないほどにたくさんのケーブルが宙を舞っている。この写真はハノイ工科大学の周辺だ。学生たちがネットでゲームをやっている店が路地裏にたくさん並んでいるためか、ADSLのケーブルが縦横無尽に張られているのかもしれない。

xxP1020210.jpg       写真:ハノイの文明進歩の象徴ともいえるたくさんのケーブル

xxP1020204.jpg       写真:路地裏で宙に舞うハノイのケーブル

この写真をFlickrに出したところ、ある人からメールが来た。その人はFlickrのランドリーコミュニティのマネージャをやっている人で、是非ともこの写真をランドリーに出してほしいというのだ。ランドリーというのは洗濯物のことであるが、確かにケーブルの向こう側に洗濯物が写っている。

これに刺激されて、ハノイに行くと洗濯物を観察するようになった。黒色のケーブルとは対照的に、ハノイの洗濯物はカラフルなのである。赤、黄、緑と原色のシャツが、一本のひもにたくさんぶら下げられている。たくさんのケーブルの向こうにカラフルな洗濯物があり、雑多な街に暮らす人びとの生活を象徴しているようにもみえる。

文明と生活を象徴するこの写真をハノイの記号にしたいと思う。

xx_DSC3564.jpg       写真:ハノイの記号 ケーブルと洗濯物は文明と生活の象徴だ

小川克彦