つまみ

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『つながり進化論-ネット世代はなぜリア充を求めるのか』を発表

11年04月01日

小川研の皆さんとSFCの学生たちのおかげで

「つながり進化論-ネット世代はなぜリア充を求めるのか」中公新書2100

を出版することができました。執筆にあたり、皆さんのご協力を感謝します。

この本を読むと「ソーシャルメディアがなぜ流行るのか」が分かるようになります。そして、ネットとリアルのコラボレーションが進化し、近未来のソーシャルメディアが見えるようになることを期待しています。

本書には小川研の研究会の風景が写真で掲載されています。撮影は2009年5月8日とちょっと古いので、大半のメンバーが卒業してしまいました。このころはまだTwitterをあまり使っていませんでした。このあとで、新しいメンバーも加わり、ネットの使い方がかなり変わりました。

HP-color Photo.jpgこれから読む人のために、本書の「まえがき」と「目次」を載せておきます。第2部のつながりの「心情」から読んで、第1部のつながりの「技術」をあとで読むのもいいと思います。

■■■まえがき

ネット世代とは物心ついたときからネットがあった若者たちのことだ。そのネット世代に教えてもらった聞きなれない言葉が、「リア充」だった。その意味は、「リアル(現実)の生活が充実していること」である。たとえば、彼氏彼女と充実した恋愛をしていたり、気の合う仲間と毎日おしゃべりしたりすることが「リア充」なのだ。

学生たちはネットばかりやっていて、リアルな生活にあこがれているのだろう、と最初は思っていた。もちろん、彼女のいない非リアな(リア充でない)草食系男子もいるが、彼氏彼女のいる学生は多い。サークルやバイトの友だちと「オール」(一晩中)でカラオケやおしゃべりを楽しむ学生もよくいる。そんな学生たちがあらためてリア充を強調している。これには何か理由があるのではないか。そんな疑問から学生たちとの対話を始めた。

調べていくうちに面白いことが分かった。自分はリア充だと思う人が70パーセントもいるのに、好きな場所が自分の部屋という人が半数もいる。多くの人とつながっているけれど、ひとりでいるのが好きということだ。また、人と人のつながりが希薄になったとよく言われるが、学生たちの意見は違う。むしろ、つながりは濃くなったと思っている。

本書は、このようなネット世代の矛盾する心情を解き明かしたものである。

ネット世代の心情に大きな影響を与えたのはネットの技術とサービスだ。本書の特徴は、つながりの技術と心情の両方を網羅したことである。

第1部は、人と人をつなげる技術について、30年にわたるその進化を失敗例も含めて解説する。技術の進化によって新しいネットサービスが誕生し、そのサービスが人びとの心情を変えた。第2部では、人びとの心情から見たプラスとマイナスのつながり方について、さまざまな事例をまじえながら述べる。第3部では、ネット世代の心情をベースにして近未来の実践的なネットサービスを考える。

大人にとって日ごろ「疑問」に感じる若者の言動を理解し、若い人にとっては同世代と「共感」できる心情を発見することで、本書をこれからのネットサービスを考える礎にしていただければ幸いである。

 

■■■目次

  序章 今どきの学生、ネットをどう使っているか

第1部 技術から見た人と人のつながり、その進化をたどる

  第1章 個人をつなげるサービス-固定電話からケータイメールへ
   1.1 固定電話から携帯電話へ
   1.2 電話からメールへ
  第2章 新たなつながり方の誕生-パソコン通信からTwitterへ
   2.1 パソコン通信からインターネットへ
   2.2 2ちゃんからTwitterへ
  第3章 失敗してしまったネットのサービス

第2部 心情から見た人と人のつながり、プラスとマイナスのつながり方

  第4章 つながりの心情-プラス面
   4.1 自由と平等-ケータイとメールで変わった心情
   4.2 仲間探しと助け合い-ネットコミュニティで変わった心情
  第5章 つながりの心情-マイナス面
   5.1 束縛と演技-ケータイとメールで変わった心情
   5.2 悪意と疲労-ネットコミュニティで変わった心情

第3部 人と人のつながりの未来を考える

  第6章 人の心情はどう変わっていくのか
   6.1 ネット⊃リアルに進化する
   6.2 リア充な世界は縮んでいる
  第7章 これからのネットに求められること
   7.1 人とモノと街をつなげるネット
   7.2 シニアたちのリアルとネット

 

小川克彦